Thursday, April 4, 2002

[勝間通信」 裏山はイヌ棄て山か?民度が問われる千葉の経済環境

 先日、知人が勝間にやってきた。「猫びより」という雑誌の編集をしている方だ。うちの子供たちも何度かご厄介になったことがある。彼女はいずれは農家に住んでみたいというご夫婦と同行した。我々はアトリエの周りを一通り見たあと、裏山の奥にある牧場を久しぶりに訪れてみた。

 上総は丘が多い。丘のてっぺんは多くが畑になっており、谷の田んぼとてっぺんの畑の中間に雑木と人家がある。アトリエの裏山の牧場は、もともと隣り部落の畑だったものだが、バブル期にハウスメーカーが宅地を建てるために買い取ったという。しかし、そんな試みも経済の破綻でとん挫、ハウスメーカーは土地を手放し、牧場経営を夢見た人間の手に渡った。 勝間に移ってきた頃には、辺り一面牧草が生い茂り、牛も牧舎を賑わしていた。

 勝間部落の道祖神から、小径をあがってアトリエを右に見ながら雑木の中にはいる。そこを出ると尾根路に至る。牧場はそこから入る。入るというより、隣り部落への街道なのだ。街道を挟んで牧草地があり、経営者の住まいがある。以前、住まいの周りには子供の遊び道具が乱雑に散らかっていた。玄関の脇には犬小屋があり、小径を通り過ぎると吠えかかってきたものだ。が、今その声はない。住まいに人の気配もない。

 一体いつ頃から勝間周辺は変わり始めたのだろうか。特に隣り部落の変化は激しい。谷筋の多くが産廃の投棄場所になってしまった。尾根筋(隣り部落との境)から隣り部落に下がる谷間は、すでに二カ所が埋め尽くされ、さらに一カ所準備が始められていた。大型のダンプカーが尾根路を出入りしているのも眺められた。 首輪をした毛並みのいい黒毛の犬が工事現場から飛び出してきて、我々を追いかけてきた。牧場主の飼い犬だったのだろうか、思い出してみるもわからないまま、アトリエに戻った。

田んぼの畦の迷いアフガンハウンド(らしい)
首輪をしていたが鑑札は見あたらなかった
その日から二三日後のこと、家の中に猫子たちが飛び込んできた。外に出てみると、裏の畑に先日の黒犬がもう一匹、白い子犬をつれて訪れてきた。二人の首輪はまだ新しいものだった。白い子犬とはお初である。しばらく吠え声をあげていたものの、いつの間にか姿を消していた。

毛は汚れているものの実に威風堂々の容姿
翌日、今度は隣の畑である。穏やかな日差しのなかで、大きな姿が横たわっている。横たわった後に動かない。おいおいおい大丈夫かよ、何で里にこんなに犬が降りてくるんだ。カメラを手に庭に降りると起きあがってきた。心配をよそにその犬は気持ちよさそうに昼寝をしていた。大きい!でかい!高い!どうもアフガンハウンドらしい。白い毛並みにはブラシも入っていない。薄汚れて灰色、手入れが不十分のようだ。首輪はあるものの、鑑札も見あたらない。

 裏山は犬棄て山なのか?このところ畑にやってきたお犬さんはみな、どうみても由緒正しそうだ。以前わが家で最後のひとときを過ごした雑種とは全く違う。これでは千葉県民の民度が疑われる。千葉県の就業構造は建設業が過半を占めている。おかげでこのところの経済環境が風景にも現れている。多くの里山が残されていた上総も、谷間が産廃で埋められていく。そして人影のない山間に、首輪を残した犬の姿が突然に現れたのだ。

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