上総は丘が多い。丘のてっぺんは多くが畑になっており、谷の田んぼとてっぺんの畑の中間に雑木と人家がある。アトリエの裏山の牧場は、もともと隣り部落の畑だったものだが、バブル期にハウスメーカーが宅地を建てるために買い取ったという。しかし、そんな試みも経済の破綻でとん挫、ハウスメーカーは土地を手放し、牧場経営を夢見た人間の手に渡った。 勝間に移ってきた頃には、辺り一面牧草が生い茂り、牛も牧舎を賑わしていた。
勝間部落の道祖神から、小径をあがってアトリエを右に見ながら雑木の中にはいる。そこを出ると尾根路に至る。牧場はそこから入る。入るというより、隣り部落への街道なのだ。街道を挟んで牧草地があり、経営者の住まいがある。以前、住まいの周りには子供の遊び道具が乱雑に散らかっていた。玄関の脇には犬小屋があり、小径を通り過ぎると吠えかかってきたものだ。が、今その声はない。住まいに人の気配もない。
一体いつ頃から勝間周辺は変わり始めたのだろうか。特に隣り部落の変化は激しい。谷筋の多くが産廃の投棄場所になってしまった。尾根筋(隣り部落との境)から隣り部落に下がる谷間は、すでに二カ所が埋め尽くされ、さらに一カ所準備が始められていた。大型のダンプカーが尾根路を出入りしているのも眺められた。 首輪をした毛並みのいい黒毛の犬が工事現場から飛び出してきて、我々を追いかけてきた。牧場主の飼い犬だったのだろうか、思い出してみるもわからないまま、アトリエに戻った。
田んぼの畦の迷いアフガンハウンド(らしい) 首輪をしていたが鑑札は見あたらなかった |
毛は汚れているものの実に威風堂々の容姿 |
裏山は犬棄て山なのか?このところ畑にやってきたお犬さんはみな、どうみても由緒正しそうだ。以前わが家で最後のひとときを過ごした雑種とは全く違う。これでは千葉県民の民度が疑われる。千葉県の就業構造は建設業が過半を占めている。おかげでこのところの経済環境が風景にも現れている。多くの里山が残されていた上総も、谷間が産廃で埋められていく。そして人影のない山間に、首輪を残した犬の姿が突然に現れたのだ。
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